以前、フルダブルホルンのF/B切り替えを逆にするという記事を書きましたが、その際、「そもそもF管B♭管とは何なのか?」という質問を受けました。
そこで今回は、F管やB♭管が何を意味するのか、そしてホルンにおけるF管B♭管について書いていきます。
F管はFから始まる倍音列が出る管
金管楽器は、同じ運指で複数種類の音を出すことができますよね。
これらの音は、「その運指で出せる最低音」の自然倍音列の音です。
ピストンやレバーを押さずに出せる最低音がFであるとき(その楽器の基準となる管の長さで出る音がFのとき)、その楽器はF管の楽器であるといいます。
B♭管やC管、E♭管といった場合も同様です。
ホルンにおけるF管/B♭管
左手で音階を作れるようになるまでは、F管が都合がよかった
教えていただいた説によれば、左手のレバーが生まれる前に、ベルに入れている右手で音階を作っていた頃の名残のようです。
バルブシステムが開発されるまでは様々な管長のホルンが使われました。
ハンドストップ奏法が発達しておおよそ半音階が出せるようになったとき、”右手”の運指と音色の都合が良かったのがD~F管辺りです。
その管長にバルブをつけたので、F管が主流になったそうです。
(中迫酒菜さん、コメントありがとうございました!)
B♭管で吹きやすく
高音域になると、自然倍音列の間隔が狭くなり、音を当てるのが難しくなります。
そこで、F管よりいくぶん管の長さが短いB♭管を用いることで、高いほうの音も当てやすくなりました。
F管/B♭管の使い分け
フルダブルホルンの場合は親指のレバーでF管とB♭管を切り替えられます。
一般的な使い分けを紹介します。
基本的にはB♭管を使う
音の当てやすさやほかの管楽器とのブレンドを考慮して、基本的にはB♭管で演奏します。
F管を使うタイミング
F管を使うタイミングは大きく3つです。
- B♭管では出せない低音域を演奏する場合
- B♭管ではピッチが合いにくい音を演奏する場合
- ゲシュトップ奏法で演奏する場合
チューニングのB♭の1オクターブ下のB♭の下のFから下の音は、B♭の音を除き、F管でしか出ません。
また、チューニングのB♭の半音上のB(H)や全音上のCはB♭管だとピッチが合わせづらいため、これらの音を演奏する場合はF管を使用することが多いです。
ゲシュトップ奏法の際には、B♭管だとピッチが3/4音上がって運指による調節ができないため、F管で記譜の半音下の運指で演奏します。(F管だとゲシュトップ時にピッチが半音上がります)
まとめ
F管、B♭管というのはその楽器の基本の長さに由来します。
フルダブルホルンではこれらの管を必要に応じて切り替えることで、様々な演奏が可能になります。
コメント
ホルンがF管である理由ですが、以下の説をよく耳にします。
バロック~ロマン初期、バルブシステムが開発されるまでは様々な管長のホルンが使われました。
バロックまでは倍音のみでしたが、古典期に入るとハンドストップ奏法が発達しておおよそ半音階が出せるようになり、その時の”右手”の運指と音色の都合が良かったのがD~F辺りです。
(上にあるとおりBb管ではゲシュトプフトが上手く行かない)
その管長にバルブをつけたので、F管が主流になったそうです。
コメントありがとうございます!
なるほど、ハンドストップ奏法との兼ね合いとのことで、納得です。
長年の疑問が解決して、とてもすっきりしました!
(教えていただいた内容をもとに、記事を一部修正しました)